私の入居生活

西巻 道寛

私は施設の入居者の中では最年少の方ですが、長期にわたって入居者されている方の話をお聴きしますと、こんなに長生き出来るとは思わなかった、少なくとも5年は長生きしていると思うという話をされます。
 何より、独りの生活の不安が無くなったことだと思われます。子供さんの所へ行っても早く知足荘へ帰りたいと思っている方が多いようです。あまり大事にされてしまい、体調を崩して帰荘されるような方も何人かありました。
 それでも知足荘の生活が楽しいと思って生活しているようです。
 毎月最終土曜日の午后に俳句の会「チョイボケの会」があり、8~10名の方が参加し句会を開いています。知足荘で初めて俳句に触れた方もいらっしゃいます。私は自信がないので、そのあとのとりまとめの原稿を打ち込むお手伝いですが、おや、この人随分うまくなったなとか、前は季語がない句ばかりだったのに、しっかり季語が詠まれている等々、打ち込みにも張りが出てきました。
 最近は文字だけでは物足りないので、季節の花の写真を一つ加えるようにしています。
 住人が、なにを楽しみにしているかいろいろ話をしますが、夜のTVの歌謡曲の番組が一番のようです。新聞の放送番組表の話が、一番出てきます。それ以外は、今日は何があるというような話題が出ます。
 毎月、決まって来てくださるボランティアの高野先生の会では、みんなで会場のセッテングをします。
 「童謡を唄う会」では、皆さん声を合わせて歌っています。高野先生も相当、お年なのですが、童謡ばかりでなく、懐かしのメロディも織り交ぜて進めているようです。
 遠藤さんが当直のとき担当しているカラオケも、楽しみにしています。入居してから覚えた歌を、十八番にしている人もいます。
 私は老化を防ぐのに何をしたらいいか考え、言葉をつかさどる左脳のほかに、音楽などで右脳を刺激することがいいと思いますので、自分のクラシックのCDを利用することを考えました。
 初めはせいぜい1時間と考えましたが、16人もの人が来てくださったので、2時間と変更しました。
 クラシックを高尚と思う方もいましたが、思いがけなく、何の楽器?聴いたことがあると、毎回楽しみにしている人が増えました。オペラのDVD「カルメン」を一番初めに演奏しました。
 オペラハウスの内部や、舞台など初めての方がほとんどで、それなりに喜んでいただきました。
 一昨年には映画「永遠の0(ゼロ)」を20名の方が鑑賞されました。
 高校の同級生から電話があり、りゅーとぴあコンサートホールで世界的指揮者コバケンこと小林研一郎が指揮するコンサートがあり、8枚を皆さんに渡したところ、喜んで下さいました。
 ドイツの作曲家マーラーの交響曲のDVDでは、誰も知らなかったのですが、今ではマーラーのことが日常の話に出てきます。マーラーの伝記映画もみて貰いましたので、更に親しみを持っていただけたのだと思っています。
 私がこうしたことができるのは月3回が精いっぱいです。今後もクラシックのよい題材を選び、入居者の皆さんと楽しみたいと考えています。